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「40歳の教科書 親が子どものためにできること」

ドラゴン桜の桜木先生の教育本

●評価

全体評価:4
(1,2,3-,3,3+,4,5の7段階評価)

内容:4

読みやすさ:4

コメント:マンガ・ドラゴン桜の登場人物の桜木が、様々な教育論を紹介する形式。英語はいつ学び始めるべきか、中高一貫校は幸せへのプラチナチケットか、お金と仕事をどう教えるか、挫折や失敗をした子どもにどう接するか、という4点に対して、それぞれ意見の違う複数の識者が答える形式。同じテーマについて、学者、経営者、タレント、教師、マンガ家、スポーツ選手など様々な立場の人間がそれぞれの考えを展開していて興味深い。

(2010年発行、モーニング編集部&朝日新聞社編 講談社)

・本を読んで取り入れたいと思ったアクション

失敗した時に大切なことは、その理由を考えること。子ども達に「考える時間を与えること」。なぜの気持ちが人を育てる。自分の頭で考えてこそ、成長がある。親や先生が失敗してはいけない、という価値観を植えつけるから、失敗が怖くなるし、挫折から立ち直れなくなる。失敗してもいいというメッセージを与える。

・本のポイント

(太字は私が勝手に引いた強調)

・9割の日本人に英語は要らない。英語ができないのは、英語が要らないから。(元マイクロソフト日本法人社長・成毛眞氏)

・日本人は世界で一番英語の発音が下手。子どもをカタカナ英語に染めないで。(タレント・デーブスペクター氏)

・子どもの居心地のよさを優先しない。公立校の異質な集団でもまれていく中で、多様な価値観を知る。中高一貫校では中だるみがでる。(元杉並区立和田中学校校長・藤原和博氏)

・小さな子どもの脳に関する科学的データを絶対に鵜呑みにすべきでない。人間の脳はようやく研究が本格化したばかりの段階で、まだ何もわかっていないに等しい。(東京大学教授・開一夫氏)

・誰かにお金をもらって生きていくのは乞食の生き方。自由と責任は有料で、お金がない人には何一つ自由がない。結婚に失敗しても自分に稼ぎがなければ、離婚という自由も選択できない。もう少し頑張れば手が届きそうな目標を見つけて、一歩ずつ前に進むこと。よその大人に叱ってもらえる機会や、頑張った分だけほめてもらえる機会は、早ければ早い方がいいので、アルバイトは絶対若いうちからやるべき。学校は人間関係を学ぶ場。(漫画家・西原理恵子氏)

・サイゼリヤは安くしようと思っているわけではなく、値打ちをだそうとしている。自ら利益を生み出さないボランティア活動は継続性の問題があるので、世のため人のためになにかを成したいならば、その志をビジネスとして形にすること。(サイゼリヤ会長・正垣泰彦氏)

・ニトリの優先順位は1,2,3に安さ、4に適正品質、5でトータルコーディネート。物事の優先順位はこれ位徹底しないと、すぐに入れ替わってしまう。自分1人で見ている夢はただの妄想。夢はそれを仲間と共有したとき、はじめて現実のものになる。(ニトリ社長・似鳥昭雄氏)

・仕事のやりがいは、自分の仕事が他者に喜ばれ評価されること、自分の技術や能力が以前より成長している実感があること。仕事をお金で判断しないこと。たとえお金が集まりにくくても、立派な仕事をしている人はたくさんいる。仕事の価値はお金だけで判断されるものではなく、金は国や場所、血縁関係や出身大学など社会的な立地条件によっても大きく変化するもの。(経済評論家・山崎元氏)

・日本の教育全体はこうすればうまくいくという、効率よく正解にたどりつくための道筋を教えて、それこそが教育だと思っている。いざ歯車が狂いだしたら、学校で教わるうまくいくための能書きが役に立たない机上の空論であることに直感的に気づいている。大人たちがどんな失敗を経験して、その失敗をくぐり抜けてきたのか、本気で知りたがっている。挫折も失敗も知らず、正解主義にはまると失敗に弱くなる。挫折や失敗はワクチンのようなもので、子どもの失敗を否定してはいけない。失敗を創造に変える省察の作業が必要。(東京大学名誉教授・畑村洋太郎氏)

失敗した時に大切なことは、その理由を考えること。子ども達に「考える時間を与えること」。なぜの気持ちが人を育てる。自分の頭で考えてこそ、成長がある。親や先生が失敗してはいけない、という価値観を植えつけるから、失敗が怖くなるし、挫折から立ち直れなくなる。失敗してもいいというメッセージを与える。(福岡ダイエーホークス監督・工藤公康氏)

・アドラー心理学の育児と教育の目標。行動面では自立することと、社会と調和して暮らせること。行動を支える心理面の目標は、わたしには能力があるという意識、人々は私の仲間であるという意識。減点法の評価をやめて加点法で考える。(哲学者・岸見一郎氏)

 

●感想あれこれ

英語はいつ学び始めるべきか、中高一貫校は幸せへのプラチナチケットか、お金と仕事をどう教えるか、挫折や失敗をした子どもにどう接するか、という4つの論点について、様々な分野の人が自分なりの考えを述べている形式。

この本が素晴らしいことは、同じ論点でも色々な考えがわかること。例えば英語早期教育や発音は必要がないという学者がいる一方で、アメリカ人が日本人の英語は世界一発音が下手だからしっかり学ぶべきと言っていたり、同じ論点でも異なる意見の人の考えが出ていること。1つの正解や価値観だけしかない世の中ではないので、このように多くの識者の考えに触れられるというスタイルは素晴らしい。特にお金と仕事をどう教えるか、挫折や失敗をした子どもにどう接するか、などは興味深く読めた。

アリヴェデルチッ!