「子どもをのばすアドラーの言葉」
アドラー心理学アプローチの子育て本。
●評価
全体評価:5
(1,2,3-,3,3+,4,5の7段階評価)
内容:5
読みやすさ:4
コメント:「嫌われる勇気」でアドラー心理学を紹介したベストセラー作家の、アドラー流子育て本。非常にわかりやすい考え方と書き方。
(2016年発行、岸見一郎、幻冬舎)
●本を読んで取り入れたいと思ったアクション
・教育の目的は自立。その3条件は、自分で決められる、自分の価値を決められる、自己中心性からの脱却
・勉強は本来楽しいもの。子どもが勉強しないことは、勉強の喜び、楽しみを子どもに教えてこなかった大人の責任。親が勉強を苦しいものとみなせば、子どももそう思う。
・勉強は本来楽しいもので、立身出世で優秀になるためにやるのではなく、人に役立つためにするもの。
・自己責任の原則。致命的なこと以外は失敗させる。一方で目標はいつでも変更可能と伝えておくことが大切。
・過干渉しない。子どもは親の期待を満たすために生きていない。
・勉強ができる子は、他の子どもの勉強を手伝うようにすることで、貢献感を生む。子どもは自分に価値があると思えたら、自分の課題に取り組む勇気を持てる。勉強でなくても、何かで貢献して価値があると思えたら、取り組む勇気も生まれる。
●本のポイント
・教育の目的は子どもの自立。そのための3条件は、自分で決められる、自分の価値を決められる、自己中心性からの脱却(大人からの援助は当たり前でない、援助は義務ではない)
・単純に叱めたりほめたりすることは、結果的にさらに子どもが同じように注目を浴びようと、その行動を強化する。叱っても行動が収まらないことは、親の注目を浴びるために叱られることを子どもが願っているから。叱るからこそ、問題行動を辞めない。電車で静かにすることを知らないならば、叱るよりまずはそのルールを知らせてあげる。そんなことで注目をひかなくてもいいと教える。ほめる場合は、「静かにしてくれてえらいね」、と子どもを下にみずに、「静かにしてくれてありがとう」と貢献に対して感謝を伝える。そうすることでほめられなくても、適切な行動につながる。
・過干渉しない
褒められたり、「大変だったね」、という声がけも必ず他の人が声をかけてくれるとは限らないと学ぶ必要がある。声をかけるならば、「何かできることはある?」。親でも子どもの課題に土足で踏み込まない。そうなると本当に親の力が必要なときに、子どもから言い出せなくなる。「あなたのために言っている」という親のセリフは愛情という名に隠された支配。
子どもは親の期待を満たすために生きていない。子どものすべてを親がわかっている訳ではない、言動に疑問があるなら率直に尋ねる。この親なら相談にのってくれそうだと子どもに思われる親になれ。
・勉強は本来楽しいもの
何のために勉強するのかを話し合う。考えを押し付けない。勉強してくれてありがとう、は言わない。子どもが勉強しないことは、勉強の喜び、楽しみを子どもに教えてこなかった大人の責任。親が勉強を苦しいものとみなせば、子どももそう思う。今頑張っておけば、楽ができるということを考えてはいけない。
・勉強は最終的には社会のため
今している勉強がやがて人のために役立つ、と教える。「社会に役立て」と説く。自分のことしか考えられないエリートは社会に有害。勉強は立身出世で優秀になるためにやるのではなく、人に役立つためにするもの。それを知らなければ、辛ければすぐに辞めてしまう。
・自己責任
子どもが失敗した時は、子どもが責任をとるという原則。致命的なこと以外は失敗させる。親が失敗しないように先回りすることは、子どもの課題を親が肩代わりする甘やかし。子どもを自分で責任をとれないとみなして、信頼も尊敬もしていない。
一方で目標はいつでも変更可能と伝えておくことが大切。子どもを追い詰めない。自己責任で親の反対を振り切って選んだから、もう方向転換できないと思わせない。
・子どもに勉強を強制させる親
子どもの成功を自分の手柄だと思うようになる。子どもは馬鹿で見込みがないと無視されるより、叱られて注目を得たいと思う。親に反発するために勉強しない子になる。親は子どもの人生に責任をとれない。自分より下の存在とみなされ、命令されても耳を傾けない。親の正論はやりたくない。親に負けたと思うので、正論であればある程、従いたくない。知らないことを学ぶことに喜びを感じ、勉強することで社会の役に立つ本来の勉強と離れて、親子の戦いになってしまう無駄。
親は子どもが助言を気持ちよく受け入れられる関係を普段からつくっておく必要がある。ありのままの子どもを認め、親のためでなく自分のために成長していくことを願うこと。たまには親の本心を素直に伝える。「あまり勉強しているように見えないから、不安に思っている」
子どもの「明日勉強する」という約束について、子どもは自分を信頼する人の信頼を裏切ることが難しいと知っている。自分の課題を自力で解決できることを信頼する。だから、勉強した?、早く勉強教しなさい、とは言わない。土足で人の課題に踏み込まない。責任は子どもが自分で引き受けるしかない。
勉強について話したいならば、「まず勉強について話をしたい」と子どもに提案する。そこで子どもがのらなければ、それで終わり。「このままならどうなると思う」は皮肉威嚇批判にしか聞こえない。日ごろの親子関係の在り方が大切。知識や経験で違いがあっても、人としては対等。
・子どもを愛しているだけは無力 子どもの接し方を学ぶ必要がある
現場では余裕なく、行き当たりばったりで子どもと関わる親がたくさん。それは子どもとどうかかわるべきかを知らないだけ。体罰に正義はない。
・泣いて主張する場合
「泣かなくていいから、言葉でお願いしてみて」と言う。親は子どもの要求内容より、要求の仕方が嫌。泣いたり怒ったりしているならば買わない、言葉でお願いするときだけ買うと決めておく。
・子どもの一番の欲求は学校や家庭に居場所を感じられること
人生の課題に逃げない自信をもった子どもになって欲しい。他の人は仲間であるように思えるように援助すること。日ごろから子どもの貢献に注目する。具体的にはありがとう、たすかったと声をかけること。難しいが、見守ること。
受験などでも家で勉強だけすればいい訳ではない。人生における課題は、協力することによってのみ解決できると、教えること。上から目線で見ずに、家族の一員としてみる。
・ゲーム
ゲームををするしないは、本来は子どもの課題なので、共同の課題に持ち込む。ゲームについて話をしたい、と始める。怒ってやめさせるより時間はかかるがアドラー式は即効性を求めないことが大切。
・子どもにイライラする時
子どもを見ないようにする。親は親で楽しむ。教師は教科を教えるのではなく、教科で教える。
・勉強ができる子は、他の子どもの勉強を手伝うようにする
共同体感覚。人のために役立つ、という経験を持つ。自分だけができればよいと思っている場合は、自分の成績が悪く成ればあきらめるか、勉強すればできるという可能性を残すために一生懸命勉強しなくなる。他の子を教えることは、直接勉強と関係のないところで貢献感を生む。
子どもは自分に価値があると思えたら、自分の課題に取り組む勇気を持てる。勉強でなくても、何かで貢献して価値があると思えたら、取り組む勇気も生まれる。親は子どもの勇気をくじくような辱めの言葉を言わない。援助は受けるだけでなく、与えてこそ喜びとなる。
・自分にはできないと思いこまない
失敗は同じ失敗をしないように、過ちを工夫するしかない。いつまでも落ち込んでいないで、次の試験にむけて勉強するしかない。自力で解決できる自信をもてるように援助する、勇気づけ。課題に取り組まない決心は結果を出さないため。
・長所に光を当てる。
自分のことを好きになるために、ポジティブにとらえる。短所を長所に捉え直す。集中力がないのではなく、散漫力がある、飽きっぽいのではなく決断力がある。他の人の役に立つためには、その人が味方であり、必要であれば援助してくれる友人だと思う必要がある。与えられるだけでなく、与えることができる子どもになる。問題行動、欠点ばかりに目がいきがち。親が自分には価値があり、自分を好きになれるような働きかけをしてあげる。
・協力できる人間にする
競争しかしらないと協力できない。どんなに成績がよくても、自分さえ良ければいいという人間にならない。家庭のなかで勉強さえすればいいという特権的地位を与えない。
・努力すれば必ず実力はつく
親は結果に注目しない。今の自分よりも前に進もうとすることに価値がある。だから「頑張ってね」、と声がけできる。勉強しない子どもに「頑張れ」は結果をだすためのプレッシャーにもなる。たとえ失敗しても、次回も恐れずに挑戦できる子どもにする。
●感想あれこれ
アドラー心理学を著名にした岸見さんの著作。子どもに関する本ということもあり、「嫌われる勇気」に比べても、読みやすい。
子育てとか教育の現場において、ここに書いてあることをいきなり実践することは難しいと思う。
でも自分が共感できることがあれば、積極的に取り入れていくべきだ。
「嫌われる勇気」は、こうした考え方があるというだけで、気持ちが楽になったという人も多いと思う。
もしまだ読んでいない人は、おすすめの1冊。
また「幸せになる勇気」は、教育について、実は今回紹介した本以上に、しっかりと紙面を割いている。
この本も読みやすいが、こちらの方が専門用語などを使っていて、子育て以上に、教育というものについて語られている。
どれも読みやすいので、もし今回の1冊を読んで興味があれば、こうした本を読むことをオススメしたい。
教育の目的は「自立」ということは賛同するし、その上で「子どもを愛しているだけは無力 子どもの接し方を学ぶ必要がある」というメッセージは強い。
愛しているから、あなたのためだから、という言葉は反論できない程強いメッセージだが、その正しい理由があれば、何でもいいというのは大きな勘違いだし、子どもには迷惑な話。ちょっと考えればわかるけど、このロジックはテロリストと同じ。自分の信じている正しい理由があれば、たとえ自分の子どもであっても、他の人に何でもしていい訳ではないよね。
ということで、引き続き色々な本を読んでいこうと思います。
アリヴェデルチッ!