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「パパは脳研究者」

脳研究者が自分の育児を例にとりながら、脳科学の子育てを紹介した本

●評価
全体評価:2
1,2,3-,3,3+,4,57段階評価

内容:2

読みやすさ:1

コメント:子どもがこういうことをした→科学的にはこうだという説明、が続く本。内容も印刷も、読みにくい。

(2017年発行、池谷裕二著 クレヨンハウス)

・本を読んで取り入れたいと思ったアクション

自発的には身につかない行為に関しては、教えてあげる。

 

・本のポイント

(太字は私が勝手に引いた強調)

・出産の時に大量に母親に分泌されるオキトシンは脳にも作用し、相手を絶対的に信じて、愛情を注ぐようになる。父親もたくさん抱っこしたり育児に参加することで、オキトシンがでる。同時に外に対して排他的になる作用もある。

・3か月位の赤ちゃんが笑うのは、反射。笑いのレパートリーは周囲の大人が接する時間に比例して増える。対人関係の豊かさが笑いの多様性と比例。

・脳の神経細胞は生まれた瞬間が最も多く、3歳までに70%が消え、それ以降の人生は残りの30%で変わらない。減らすのは神経細胞の能力ではなく、数。3歳までに全てを経験させなくてはいけない、ということではない。それまでに習得できなかったことがあったとしても、必要な時に残った神経細胞が活躍する。ただ母語や絶対音感の獲得など、一部の能力は大人になってからは補いにくい。

子どもの自発性を育む教育はそれだけでは不完全。脳科学的には自発性を育むことができる行為と、自発的に育むできない行為がある。例えば扉を閉める、靴をそろえる、おもちゃを片付けるといった行為は脳には不自然な行為なので、これを成立させるためにはしつけが必要。しつけはかたずけなさい!と叱ることではない。しつけには強化と弱化があり、強化はほめることでその行動を再びとるように意欲を高めること。弱化はしかることで、その行動を二度ととらないように意欲を弱めること。強化でも弱化でもこどもは親の行動や判断をモデルに、自分に取り入れていく。

・絵を描いている子が絵をかく理由はただ好きだから。これをえらいね、上手だねとストレートに褒めると、子どもが絵をかくことへの興味が減る。子どもからするとほめられ続けると、絵をかくことではなく、ほめられたくて描いたのかなと、無意識に現状の解釈を変更してしまう。自分の思惑と現実が矛盾することでストレスを感じる認知的不協和の状態を、解消してしまおうとする。テストて良い点数をとったら「がんばったね」「ごほうびをあげる」ではなく、「よい点数をとると気持ちいいね」「お父さんも気持ちが言いな」などと言うべき。

・テレビゲームをしている子に「こら、勉強しなさい」と「そろそろ勉強始めたら」という2アプローチ。最初のアプローチはその後子どもにゲームは楽しかった?、と聞くとすごく面白かったと認知的不協和がみられる。やさしく諭された方は、そんなに面白くなかったと答える傾向がある。叱るとタスクをこなすやる気が減って、結果的に達成率が下がってします。学習のためにはほめることがベスト。

・ほめられることで内面化が進むまでには3つの段階がある。直接ほめる外発的強化→周囲の人がほめられることを眺める代理強化→自分で自分をほめる自己強化の3ステップ。子どもがどこの段階にいるかを見極めて、対応を変える。

●感想あれこれ

特になんでもないエピソードの後に、小難しい説明が続き、読みにくい。難しく科学的に説明するのはいいが、それで何?、だから何?、と思ってしまう。

しっかり読むと、だからこうした方がいいとかもあるが、読みにくくてわかりにくい。本来の内容は悪くないと思うが、見せ方がダメ。目次や表現、書き方を変えて欲しい。

ほめる叱るの議論や、ほめることについて認知的不協和などの話は面白かった。昨今の教育本では結果をほめることよりも、「頑張ることを褒める」「プロセスを褒める」という主張の本が多いが、「がんばったね」とプロセスを褒めることもダメ、という議論は新しかった。ただ認知的不協和は心理学で、脳科学の話ではなく著者の専門ではない。この辺の話は何が真実なのか、他にも調べてみたいと思った。

この本では東大教授の著者が「3月生まれのプロ野球選手は4月生まれの半数。しかし、東大の学生数は3月生まれと4月生まれでほぼ同じ。体格差とことなり、知能の劣等感は十分に克服できる」といっている。これが真実ならば、「東大に入る子」は5歳で決まる、の議論は完全にアウト。私もこの本の感想で「頼りない」と書いていたが、東大入学者の誕生月なんて調べればわかりそうなファクトチェック。どちらも教育の本だが、一方が嘘ということだろう。

脳科学者系の本は諸々読んだ中では、結局難しいことはたくさんいうけど、実践的に証明できるような内容はほとんどない、ということではないだろうか。

3歳まで大事、のような議論はたくさんあるけど、脳科学的な話では、それ以上具体的な話は少ないのではないだろうか。(もちろん、脳と教育という点では、
「七田式子育て理論36年の法則」だけはぶっ飛んだ内容で衝撃的だったが、トンデモの話をされても、誰も肯定も否定も証明はできないということなのだろう)上記の「本のポイント」の後半も、脳科学で証明されている専門の話とはさすがに関係ないだろうという要素も多く、こっち系の本は科学的な話を知りたいならば、その辺は気を付けて読む必要があると思った。

アリヴェデルチッ!

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