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「愛着障害」

愛着が人に与える影響について、精神科医の著作。

●評価
全体評価:3
1,2,3-,3,3+,4,57段階評価

内容:3

読みやすさ:3

コメント:子どもに対する安定した愛着がどれほど大切か。その話を、愛着がないとどうなるのか、という視点で書いた本。

(2011年発行、岡田尊司著 光文社)

・本を読んで取り入れたいと思ったアクション

しっかり愛情を与える。赤ちゃんはたくさん抱っこしてあげる。

 

・本のポイント

(太字は私が勝手に引いた強調)

人間が幸福に生きる上で最も大切なものは、安定した愛着。愛着は人と人との絆を結ぶ能力であり、人格の土台。どういう愛着スタイルを持つかで、人生や仕事の姿勢まで大きく変わってくる。

・パーソナリティ障害や発達障害にも、愛着の問題が絡まり、症状が複雑化する現実。

・抱っこからすべては始まる。たくさん抱っこする。抱っこという行為は子どもに心理的な影響だけでなく、生理的な影響さえ及ぼす。愛着は特定の存在に対する、特別な結びつき。生後から1歳半位までが、愛着形成にとって、もっとも重要な時期。この臨界期を過ぎると、愛着形成はスムーズにはいかなくなる。愛着の絆がしっかりと形成されると、容易には消されることがない半永久的な持続性がある。

・母親の愛着は子どもの安全基地。ただ気をつけることは、過保護になってサポートを与え過ぎないこと。安全基地とは、求めていないときまで縛られる場所ではない。それは子どもを閉じ込める牢獄。依存的で不安の強い、自立できない子どもを育ててしまう。

・愛着の問題は大人にもあてはまる問題。愛着障害の要因が、主に養育環境によるもの。大人の愛着障害で親と確執を抱えるたり、親に過度に従順になったり、人と信頼や愛情が維持しにくい。

・愛着障害の克服は安全基地となる存在や、社会的・職業的役割の重要性、否定的認知を脱すること(全か無かの二分法的な認知ではなく、清濁併せのんだ統合的な認知を)など。

 

●感想あれこれ

愛着障害の症状や、著名人の愛着障害の問題が具体的にたくさん書いてある。川端康成、太宰治、夏目漱石、谷崎潤一郎、ビル・クリントン、ヘミングウェイなどの人生を、愛着スタイルという観点で読み解いていて、とても興味深い。

一方で一般的な家庭で愛する子どもの教育という意味で読むならば、たくさん愛情をあげろ、という当然のメッセージだけなので、あえて読む必要はない。

愛着の問題は大人になっても、人の人生に大きく影響する。愛着スタイルや愛着障害ということを知って考えるという点では、事例が豊かで勉強になる本である。

 

アリヴェデルチッ!